戒名は必要か?法律上の義務はありません|4つの構成と費用

しおん2026年09月08日

戒名は、法律上は必要ありません。

ご遺骨をお墓に納めるとき、法律が求めているのは埋葬許可証などの書類であって、戒名ではないからです(墓地、埋葬等に関する法律 第14条)。

ただし、菩提寺(だんなでら)のお墓に納める場合は話が変わります。 そのお寺の作法に従うことが前提になるため、実質的に戒名が必要になるのが通例です。

この記事でわかること

  • 戒名が要る場面と、要らない場面
  • 戒名の4つの構成(院号・道号・戒名・位号)の意味
  • つけない選択をしたときに、実際に起きること

戒名は法律で決められているのですか

決められていません。

「墓地、埋葬等に関する法律」第14条第1項は、墓地の管理者は埋葬許可証・改葬許可証・火葬許可証を受理した後でなければ埋葬・埋蔵をさせてはならない、と定めています。

納骨堂も同じ考え方で、火葬許可証または改葬許可証を受理した後でなければ収蔵できません(同条第2項)。

条文にあるのは書類のことだけで、戒名についての定めはありません。

つまり、戒名がなくても、火葬も納骨も法律上は行えます。

では、なぜ「戒名がないと納骨できない」という話を聞くのでしょうか。理由は、お墓を預ける先が寺院かどうかにあります。

戒名が要る場面、要らない場面

戒名の扱いは、納める先によって変わります。

寺院墓地(菩提寺)に納める場合は、実質的に必要です。寺の作法に従うことが前提になります。

公営墓地では、戒名は不要です。宗旨宗派を問わないのが原則です。

民営霊園も、多くは不要です。募集要項で確認してください。

樹木葬・納骨堂は、宗旨不問の施設が多くあります。運営者に確認してください。

海洋散骨・手元供養は、不要です。寺院が関与しない形です。

墓地の運営主体による違いは墓地の種類は3つ|公営・民営・寺院の違いで整理しています。

戒名が必要かどうかは、宗教の問題である前に、「どこに納めるか」の問題です。 ここを先に決めると、答えははっきりします。

戒名は4つの部分でできています

一般に「戒名」と呼ばれているものは、実は4つの部分の組み合わせです。

戒名は4つの部分でできている

それぞれの部分の意味は、次のとおりです。

院号(いんごう)は、「〇〇院」の部分です。寺院や社会への功績が大きい方に付きます。

道号(どうごう)は、人柄・趣味・地域などを表す2文字です。

戒名(2文字)は、仏弟子としての名です。俗名から1字取ることが多いです。

位号(いごう)は、信士・居士などで、末尾に付きます。

狭い意味での「戒名」は、真ん中の2文字だけです。院号や位号は、その前後に添えられるものです。

「戒名が長いほど格が高い」と言われるのは、院号が付いているかどうか、位号がどれかという違いを指しています。

位号にはどんな種類がありますか

浄土宗の『新纂浄土宗大辞典』では、位号について次のように整理されています。

信士・信女は、在俗の信者(優婆塞・優婆夷)を指します。

居士・大姉については、居士は「豪富ながら官位無き人」の称と説明されています。

禅定門・禅定尼は、五重相伝を受けた信徒です。

童子・童女は、7歳以上15歳未満です。
孩子・嬰女などは、6歳以下です。

ここで押さえておきたいのは、同じ辞典が「位号の決まりは、各寺院の慣例や、地域の習慣などにより異なるため定説はない」と断っている点です。

つまり、どの位号を用いるかは、全国共通の決まりごとではありません。 年齢による区分はありますが、それ以外はお寺ごとの慣例に委ねられている部分が大きい、ということです。

「他家より下の位号では失礼にあたるのでは」と気に病まれる方がいらっしゃいますが、比べる相手がそもそも別の物差しで決まっている、と考えていただくとよいかもしれません。

費用はどのくらいかかりますか

寺院と地域による幅が大きく、全国一律の公的な統計はありません。

インターネット上には「〇〇万円〜〇〇万円」という表が並んでいますが、その多くは調査年も母集団も示されていない目安です。そのまま自分のお寺に当てはめると、かえって話がこじれます。

一方で、金額が公表されているものもあります。 判断の物差しとして役に立ちますので、確認できたものを挙げます。

浄土真宗本願寺派 本山(西本願寺)が公表している帰敬式の冥加金は、成人12,000円、未成年6,000円です。
本山の法名の内願(希望の字を入れる場合)は、内願懇志10,000円以上です。

築地本願寺(本願寺派)の帰敬式は、選定法名が成人18,000円、未成年9,000円です。
内願法名は、成人28,000円、未成年19,000円です。

真宗会館(真宗大谷派)の帰敬式の受式礼金は、20歳以上20,000円、20歳以下15,000円です。

西本願寺の2つの金額は、本願寺派本山が2026年4月1日改定として公表している冥加金です。

同じ宗派の中でも、本山と築地本願寺で金額が違います。 「宗派が同じなら金額も同じ」ではないことが、公表資料からもはっきり読み取れます。

院号は、本願寺派の末寺の案内(慶集寺・正宣寺)によると、20万円以上の懇志です。
案内には「20万円以上のご懇志を宗派に寄付された方に授与される」(慶集寺)、「永代経懇志20万円以上を進納された場合」(正宣寺)といった記載があります。

ただし本山が公表している冥加金一覧表に院号の金額は載っていませんので、ご自身の菩提寺に確認するのが確実です。

なお、いま挙げたのはいずれも浄土真宗の帰敬式(生前に法名をいただく儀式)の金額です。葬儀の際に授かる戒名のお布施は、これとは別の話であり、公表されている金額はほとんどありません。

参考までに、鎌倉新書の第7回「お葬式に関する全国調査」(2026年2月27日〜3月3日調査・有効回答2,000件)では、葬儀費用の平均総額は96.73万円でした。

ただし、この総額の内訳として公表されているのは基本料金72.02万円・飲食費11.67万円・返礼品費13.03万円の3つで、お布施は内訳に入っていません。

戒名のお礼は、この数字とは別に見ておく必要があります。

金額は、お寺に聞いてよいのですか

聞いて構いません。 むしろ、それがいちばん確実です。

「皆さまどのくらいお包みになっていますか」と、周りに合わせたいという形で尋ねるのが要点です。書き方や渡し方はお布施は「濃い墨・新札」|香典と真逆になる理由にまとめています。

なお、宗派そのもので金額が決まるわけではありません。 この点は宗派で墓じまいの費用は変わる?でも触れています。

戒名をつけないと、何が起きますか

「費用がかかるならつけない」という選択も、もちろんあります。ただし、先に知っておいたほうがよいことが4つあります。

1. 菩提寺のお墓に納めにくくなる

いちばん現実的な問題がこれです。

「墓地、埋葬等に関する法律」の第13条は、墓地などの管理者は埋葬や埋蔵の求めを受けたとき「正当の理由」がなければ拒んではならない、と定めています。

この条文の解釈について、厚生省の通知(昭和35年3月8日 衛環発第8号)は内閣法制局の見解として、他の宗教団体の信者であることのみを理由に拒むことは「正当の理由」によるものとはとうてい認められないという考え方を示しています。

ただし同じ通知は、埋葬又は埋蔵の施行に関する典礼の方式についてまでも、依頼者の一方的な要求に応ずべき旨を定めたものと解すべきではない、とも述べています。

作法をどうするかは、管理者と依頼者の同意で決まる事柄だという整理です。

つまり、「戒名なしで納骨させろ」と一方的に主張できる話ではありません。 事前にご住職と相談することが、結局いちばんの近道になります。

2. 葬儀・法要を菩提寺にお願いしにくくなる

読経をお願いする場面で、戒名の授与とセットになっているお寺もあります。葬儀の前に確認しておくと、当日慌てません。

3. 位牌・過去帳の書き方が変わる

戒名がない場合、位牌には俗名(生前のお名前)を記します。「〇〇〇〇 之霊位」といった形です。

位牌そのものは、戒名がなくてもつくれます。すでにあるお位牌をどうするかで迷われている場合は、仏壇じまいと位牌の処分もあわせてご覧ください。

4. 話が離檀に発展することがある

戒名を辞退したことをきっかけに、お寺との関係を整理する流れになる場合があります。

その場合は離檀料の話が出てきますので、離檀料の相場と支払い義務は?を先にご覧いただくと落ち着いて話せます。

戒名をつけない選択そのものは、間違いではありません。 起きることを知ったうえで決めれば、後から慌てずにすみます。

宗派によって呼び方が違います

「戒名」という言葉を使わない宗派があります。

天台宗・真言宗・浄土宗・臨済宗・曹洞宗などでは、戒名と呼びます。院号・道号・戒名・位号の構成です。

浄土真宗では、法名(ほうみょう)と呼びます。「釋」+漢字2字の形で、位号は付けません。

日蓮宗では、法号(ほうごう)と呼びます。院号・道号・日号・位号の構成で、日号に「日」の字が入るのが特徴です。

浄土真宗が「法名」と呼ぶ理由

「戒名」の「戒」は、戒律を受けること(受戒)を意味します。

浄土真宗では受戒という形をとらないため、戒名ではなく法名と呼びます。法名は「釋(しゃく)」の一字に2文字を続けた3文字が基本形で、お釈迦さまの弟子であることを示します。

そのため、浄土真宗のお寺では「戒名料」という言い方がそのままでは通じない場面があります。菩提寺の宗派を先に確かめておかれると、話がスムーズです。

日蓮宗の「法号」

日蓮宗では、戒名にあたるものを法号と呼びます。

日蓮宗寺院の解説によれば、基本形は院号・道号・日号・位号の組み合わせで、中心となる日号には、宗祖・日蓮聖人のお名前から一字をいただいた「日」の字が入ります。

院号は最高位の敬称にあたり、どなたにでも付くものではありません。

生前に授かることもできます

戒名・法名は、亡くなってから授かるものと思われがちですが、そうではありません。

浄土真宗の帰敬式(ききょうしき)は、生前に法名をいただく儀式です。他の宗派にも、生前戒名を受ける仕組みがあります。

生前に授かる利点は3つあります。

1つ目は、自分で意味を確かめられることです。どんな字を入れるか相談できます。
2つ目は、葬儀の場で慌てて決めなくてよいことです。
3つ目は、費用の見通しが立つことです。

ご希望があれば、まずは菩提寺のご住職にご相談ください。菩提寺がない場合は、宗派の本山や、地域のお寺に問い合わせる方法があります。

よくあるご質問

Q. 戒名がなくても納骨できますか?

A. できます。法律が求めているのは埋葬許可証などの書類です。ただし菩提寺のお墓に納める場合は、寺の作法として戒名を求められるのが通例です。

Q. 戒名は自分でつけてもいいですか?

A. 法律上の禁止はありませんが、菩提寺があるならお勧めしません。納骨や法要の際に受け入れられないことがあります。先にご住職へご相談ください。

Q. 位号は高いものにしないと失礼ですか?

A. そのようなことはありません。位号は年齢や立場で使い分けるもので、人の価値の上下を示すものではありません。ご家族の考えとご事情で選んで差し支えありません。

Q. 浄土真宗にも戒名料はありますか?

A. 呼び方が「法名」になります。生前に受ける帰敬式は金額が公表されており、築地本願寺では2026年4月以降、成人18,000円(希望の字を入れる場合28,000円)です。

Q. 樹木葬や海洋散骨を選んだ場合、戒名は要りますか?

A. 宗旨宗派を問わない施設であれば、必要とされないことがほとんどです。ただし施設ごとに条件が異なりますので、契約前に運営者へご確認ください。

Q. 戒名料は相続税の計算で控除できますか?

A. 国税庁は、相続財産から控除できる葬式費用として「葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用」を挙げています(タックスアンサーNo.4129)。戒名料をどう扱うかは個別の事情によりますので、税理士にご確認ください。

まとめ

  • 戒名に法律上の義務はない。納骨に必要なのは埋葬許可証などの書類
  • ただし菩提寺のお墓に納めるなら、実質的に必要。作法をどうするかは事前に相談する
  • 費用は寺院と地域で幅が大きい。宗派によって呼び方も戒名/法名/法号と変わる

出典


▼戒名のこと、お墓のこと。どちらから話していただいても構いません

しおん(仏事の総合相談窓口)

お電話: 0120-976-864(株式会社原田屋・山口県周南市本町2丁目15)

監修: 株式会社原田屋(山口県周南市・創業108年)
最終更新日: 2026-09-04

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